新規事業の鍵は「新しいか?」「面白いか?」「続けられるか?」/JRE Station カレッジ(エコテックコース)第2回ダイジェスト
2022.10.26
前例のない事業をゼロから立ち上げるためには、どのような考え方が必要なのでしょうか。見通しが効かない状況でも着実に歩みを進めるための指針は存在するのでしょうか。本記事では、2021年10月20日に開催されたJRE Station カレッジ(東京駅キャンパス/エコテックコース)の第2回ダイジェストとして、株式会社リバネス・執行役員CBOの松原尚子による当日の講義の内容を紹介します。 →【第2回の実施内容はこちら】
これからの仕事は「事に仕える」から「事を仕掛ける」へ
第1回の講義では、サステナブルビジネスに取り組むにあたり、まずは自分自身が生涯かかわり続けたいと思える課題を見つけることから出発しようと話しました。そこで今回は、自分の課題を見つけるにはどうすればいいか、どのようなベクトルで考えればいいかについてお話ししようと思います。
最初にまず「モチベーションは必要ない」ということをお話しします。皆さんはモチベーションという言葉をよく使うと思うのですが、これからはモチベーションはいらなくなると私は考えています。なぜなら、仕事の定義が大きく変わるからです。
これまでの社会において、仕事とは「事に仕える」ことでした。会社から与えられた業務を、指示された通り、決められた手順でこなすのが「仕事」だったわけです。しかし、これはもうすでに世界中で起こっていることですが、今後、「決められた手順でこなせる業務」は、ロボットやAIに任せるようになります。
この動きが進むとどうなるか。人間がやるべき仕事は「事に仕える」から「事を仕掛ける」に変わっていくでしょう。つまり、人間しか持っていない知識を総動員して、新しいものや価値を作り出す。それが人間にとっての「仕事」になります。
そうなると仕事は「労働」ではなく「活動」に近いものになります。使用者に言われるまま体を動かすのでなく、自分の意思で脳をフル回転させるということです。もちろん、使用者に指示を仰ぐことがまったくなくなるわけではありません。しかし、その場合も何も考えずに指示に従うのではなく、自分が持つ知識やアイデアを反映させることが大事になります。
大きなことを成し遂げるなら、モチベーションではなくパッションを
モチベーションという言葉についてもう少し考えてみます。基本的にモチベーションは外部からもたらされるものです。仕事に興味が持てないのでやる気が湧かない。そんなとき、使用者がお金や肩書き、名誉などのインセンティブを提示して、労働者のモチベーションを高めようとするのです。
しかし、このやり方は「事に仕える労働者」に対しては有効でも、「事を仕掛ける活動家」には意味を持ちません。では、「事を仕掛ける」ときにはモチベーションでなく、何が求められるか。私は「パッション」だと考えます。つまり、自分の内側から湧き出る情熱が行動を起こす原動力になるのです。
1人のモチベーションコントローラーのもとに100人の労働者がいる集団と、自分はこれがしたいというパッションを持つ100人の活動家の集合体では、どちらが大きなことを成し遂げることができるか。あるいは、地球の課題を解決に導くことができるか。答えは明白です。ですから、皆さんも他人にモチベーションをコントロールされるのでなく、内側から湧き出る内的要因に基づくパッションをドライブさせることを心掛けてほしいと思います。
ゼロからの事業立ち上げに不可欠な3つの問い
以上を踏まえ、ゼロから事業を立ち上げるときに心得ておきたいことを挙げておきます。おそらく皆さんが事業計画を立てるときには、どれくらいの投資が必要か、市場規模はどのくらいか、売上げはどの程度見込めるかなどを議論するはずです。しかし、まったく前例のない事業ともなれば、市場規模や売上を予測するのは困難です。そこで、私は次の3つを念頭に置くことを提案します。
1つ目は「それ、新しいの?」。ただし、新しい事業でなければ挑戦する意味がないと言いたいわけではありません。すでに誰かが挑戦しようとしているなら、その人と一緒にやったほうが合理的だということです。自分が先だとか相手が先だとか、そういう些末なことにはこだわらない。目標が同じなら、手を携えてゴールを目指すべきです。
2つ目は「それ、面白いの?」。自分が心から興味を持ち、面白いと思っていなかったら、誰もついてこないでしょう。
最後、3つ目は「それ、やり続けられるの?」です。これはサステナブルビジネスでは非常に重要なことです。少しでも無理かもしれないと思うなら、いったん保留して出直すことを勧めます。
自分で得た「1次情報」を知識にしていく
自分の内側から溢れ出る情熱を傾けられる事業を考える──。こういってもすぐにこれだと思いつく人は多くないかもしれません。
そんな時に重要なのは、何であれ、自分の目で見て、自分で判断するクセをつけることです。五感を使って、自分で1次情報を得るということです。世の中には、誰かが加工したり、編集したりした情報が溢れていますが、そうした情報だけでは物事の本質を掴むことができません。
もちろん、2次情報、3次情報が有用な場合もあるでしょうが、それを鵜呑みにしてしまうのは考えものです。例えばメディアの情報を活用する場合も、直接現場に足を運んだり、当時者に会って話を聞くなどして、自分で本質を確かめにいく。それが無理でも、自分の頭で考え、検証するようにする。そういう活動を疎かにしないことです。その過程で、情報が知識になっていくのです。
<本件に関するお問合せ先>
株式会社リバネス JRE Station カレッジ運営事務局
担当:立花、海浦
E-mail:[email protected]