TOPニュース子どもが自分の歳になる時に、今と同じレベルの世の中を残したい/JRE Station カレッジ(エコテックコース)第4回ゼミ ダイジェスト

2022.05.23

子どもが自分の歳になる時に、今と同じレベルの世の中を残したい/JRE Station カレッジ(エコテックコース)第4回ゼミ ダイジェスト

サステナブルビジネスにおいては、自らの情熱で課題を見つけ、その解決に取り組む姿勢が求められます。すでに実践しているトップランナーは、どういった思いで課題解決に向き合っているのでしょうか。本記事では、2021年11月24日に開催されたJRE Station カレッジ(東京駅キャンパス/エコテックコース)の第4回ダイジェストとして、株式会社ACSL・代表取締役社長の鷲谷聡之氏による当日の講演の内容を紹介します。 →【第4回の実施内容はこちら

マッキンゼーを退職しドローンビジネスへ参画

ACSLの鷲谷です。今日は私がどういう思いでドローンビジネスを行っているか、お話したいと思います。

まず簡単にACSLについてご説明すると、千葉大学の野波健藏先生(現・名誉教授)が2013年に設立した大学発ベンチャーで、産業用ドローンの開発・製造・販売を手掛けています。産業用ドローンの専業メーカーとして初めてマザーズ(現・東証グロース)に上場しました。私は、2016年にコンサルティング会社のマッキンゼーを退職して参画し、その後COO(現在は代表取締役社長)に就任しました。

さて、新型コロナが蔓延して以降、多くの人が自粛生活を送っていたと思いますが、その間、私は違和感につきまとわれていました。というのも、緊急事態宣言が発せられ、できるだけ外出は控えるよう言われていたのに、電気は使えたし、アマゾンの荷物もきちんと届いたからです。

つまり、緊急事態宣言下だろうと何だろうと、社会的なインフラは正常に機能していたわけです。みんなが自粛しているときも、インフラを支えるために働いてくれる人たちのおかげで、私たちは、新型コロナに脅えつつも、不自由なく暮らせたわけです。

労働人口が減少しても不自由なく暮らせる社会を残したい

しかし、これからはどうでしょうか。今後、日本の労働人口は激減し、2020年から2060年までの40年間で、3分の2に減ると予測されています。早い話、今の3分の2の労働力で、日々の暮らしを維持していく必要があります。

例えば昨今、インフラの老朽化が問題視されていますが、インフラというのは、人口が減少したから放置してもいいというものではありません。人口の推移に関わらず、古くなったら建て替えや修繕が必要です。

つまり、このまま労働人口が減少すると、人々の暮しにさまざまな歪みが生じます。緊急事態宣言下よりも不自由な暮らしを強いられる可能性が高いわけです。

私は今、34歳で、3歳半と5カ月の子どもがいます。だから、彼らが大人になったときのことをよく考えるのですが、労働力不足で電気や水道が使えなくなるとか、ものが手に入りにくくなるとか、そういう世の中になってほしくないんです。誰もが不自由を感じることなく快適に暮らせる、豊かさを実感できる社会であってほしい。子どもが私の歳になる時に、今と同じレベルの世の中を残せるか。これは私にとっての「自分事」なんです。

「苦役」を機械が行えば豊かな暮らしが維持できる

私がACSLに飛び込んだのはそれが大きな動機です。ACSLでは「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」というミッションと、「最先端のロボティクス技術を追求し、社会インフラに革命を」というビジョンを掲げています。ドローンという新しい技術を駆使すれば、これまで人の手に頼っていた付加価値の低い業務や危険な業務、つまり「苦役」を機械が行えるようになります。それが社会の隅々にまで広がれば、労働力が激減しても、豊かな暮らしを維持することができます。私は、そんな社会を目指して、ドローンビジネスに取り組んでいるわけです。

「下水道管の点検をする」ドローンの開発に成功

では、ACSLでは実際どんなプロジェクトを手掛けているのか。例えば、ドローンで下水道の点検を行うというプロジェクトがあります。日本の下水道の総延長距離は48万㎞に及ぶのですが、そのなかには老朽化が激しいところもあり、定期点検が必要です。ところが、これが大変なんです。マンホールを開けて入ろうとすると、ゴキブリが壁一面に張りついていたりするし、臭いも半端ではありません。そんななか、照明を当てながら点検していくわけです。当然、積極的にやりたいと思う人は少ないので、人材もなかなか集まりません。そこで、上下水道事業運営やコンサルティングを手掛ける企業からの問い合わせをきっかけに、2015年に共同開発に着手しました。結果、狭い下水道の中でも飛行しながら点検できて、防水・防塵機能を備えていることから繰り返しの使用も可能なドローンの開発に成功。2021年にようやく量産機種が完成しました。

以上、ACSLでの取り組みの一例をご紹介しましたが、われわれの世代が頑張れば、次の世代に持続可能な社会を残すことができる。これが、私自身が事業を通じて課題解決に向き合う際に根底に持ち続けている思いです。

 

「最初から最後まで関わる立場」に大きなやりがいを感じる

(ここからは当日の質疑の内容をご紹介します。)

──受講生 なぜ他の事業ではなく、「ドローン」を選んだのですか?

これはもう「めぐり逢い」ですね。私自身は建築の専攻でドローンとは縁がなかったのですが、千葉大学の野波先生がドローンの会社を設立して、素晴らしい技術を有していた。今後は、その技術をいかに社会実装するか、というフェーズでした。それで、私が参画すればもしかしたら何か面白いことができるんじゃないか、爆発的な成長を目指せるのではないかと思ったんです。

色々な人に「よくマッキンゼーを辞める決断がつきましたね」ということは言われました。いくら成長分野とはいえ成功の保証はないし、給与も大幅に下がっただろうと。働く環境が厳しくなったことは否定しませんが、迷いはまったくありませんでした。というのも、コンサルティングの仕事は戦略を考えるのがメインですが、以前から私はそれを自分で実行してみたいと思っていました。最初から最後まですべて関われるような立場に立ちたい、と。だから、今は大きなやりがいを感じていますし、決断して正解だったと思っています。

 

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