TOPニュースユーグレナ・永田暁彦氏×リバネス丸幸弘「サステナブルビジネスの実現に必要な考え方とは」/JRE Station カレッジ(エコテックコース)第1回ダイジェスト

2022.04.11

ユーグレナ・永田暁彦氏×リバネス丸幸弘「サステナブルビジネスの実現に必要な考え方とは」/JRE Station カレッジ(エコテックコース)第1回ダイジェスト

2021年10月6日に開催されたJRE Station カレッジ(東京駅キャンパス/エコテックコース)の第1回では、株式会社ユーグレナ・取締役代表執行役員CEOの永田暁彦氏をゲストスピーカーに招き、「課題発掘からはじまるサステナブルビジネスとは」をテーマに座学講義およびゼミを行いました。ここではそのダイジェストとして、永田暁彦氏とゼミ長である株式会社リバネス・代表取締役グループCEOの丸幸弘によるディスカッションおよび受講生との質疑応答の一部を紹介します。

 

サステナブルとは「二項対立ではない仕組み」をつくること。

永田 JRE Station カレッジではサステナブルビジネスをテーマに掲げていますよね。それでいうと、私は常々「サステナビリティという言葉の定義は慎重に設計しなければならない」と思っています。いまだに間違った使われ方をしている場面をよく目にします。その象徴が「サステナビリティ=地球環境のこと」というものです。

 確かに、そう捉えられがちですね。

永田 では、どう定義するべきなのか。サステナビリティは、一般的に「持続可能性」と訳されますが、それをさらに分解すると「二項対立ではない」という言い方ができると私は思っています。もっと分かりやすく言うと、例えばこれまでは「会社を大きくするためには、ある程度は地球環境が犠牲になるのも仕方ない」という考え方がありましたよね。企業活動と地球環境は対立するもの、つまりはトレードオフの関係で、両立させるのは難しいと。

 永田さんとしては、それは違うだろうと。

永田 企業活動と地球環境のどちらか一方しか成り立たないのであれば、それは本当の意味で「持続可能」と言えないのではないかと。同じことが、例えば先進国と途上国の関係、あるいは都市と地方の関係にも当てはまります。どちらか一方が豊かになっても、もう片方が貧しいままでは、長期的にはどこかの段階で必ず破綻します。どちらも豊かになれるからこそ、「持続可能」なんです。

 なるほど。

永田 現役世代と未来世代の関係も同じです。明るい未来を築くためには、私たち現役世代が我慢しなければならない。あるいは、現役世代が豊かな生活をするためには、未来の世代に問題を先送りするのも止むを得ない。これはどちらもおかしくて、現役世代も未来世代も幸せになれる方法を見つけるべきだと思います。

 JRE Station カレッジでは受講生がサステナブルなビジネスを構築することがゴールとして設定されていますが、その大きなヒントが出ましたね。つまり、サステナブルビジネスを実現するためには、いろいろな意味で二項対立にならないような仕組みを作り上げる必要がある、と。

永田 はい、そこはきちんと抑えておくべきだと思います。

 これからの時代は、ビジネスへの向き合い方を根本から変える必要がありそうですね。

永田 ビジネスの形は、時代時代で変わっていくものだと思います。例えば明治維新後、あるいは第二次世界大戦直後の日本には、インフラも産業もなかった。当時の人々は「この国を発展させるために」という思いで事業に取り組み、汗を流していたはずです。でも、その結果として物理的に満たされた後は、皮肉なことではありますが「社会のために何かをする」という動機付けが難しくなった。そこからビジネスは資本主義的に経済価値を高めていくものへと変わっていったんです。

 そして今は再び、その形を改めるべきタイミングが来ている、と。

永田 はい、そう思います。

 

社会に影響力を持たなければ、変革することはできない。

 その意味では、いち早くサステナブルビジネスへの揺り戻しを実現させた企業がユーグレナだと思うのですが、そもそも永田さんたちはどういう想いでビジネスに取り組んできたのでしょうか。

永田 考え方としてはとてもシンプルで、ユーグレナの売上が10倍になればそれだけ社会が良くなるし、それだけ社会課題が解決するはずだ、と。そう信じて事業に向き合ってきました。

 確かに、今はその通りになっています。ユーグレナという会社が大きくなったことで、例えば支援先であるバングラデシュでは栄養失調の子どもの数が明らかに減少しているわけですから。ただ、普通は社会を良くするという理念を掲げても、そこにたどり着くのは極めて難しいことですよね。なぜユーグレナは、その困難を乗り切ることができたのか。どんなプロセスを経てここまでたどり着いたのか。僕はそこに興味があるんです。

永田 確かに、サステナブルビジネスを志向しながら道半ばで暗礁に乗り上げ、撤退する企業は少なくありません。その原因はいろいろあると思いますが、「自分たちは何を成し遂げたいのか」もしくは「自分たちはどういう状況でいたいのか」という、この2つの選択を迫られたときに後者を優先してしまう会社は成長が止まります。

 どういうことでしょう。

永田 例えば世の中をよくする何かを開発したとします。でも、それだけで世界を変えることはできません。世界中の人々が使えるような仕組みを作って、普及をさせて、そこで初めて世界は変わります。ところが、開発の成功には大きな達成感があります。これが落とし穴なんです。

 つまり、大きな目標を掲げてスタートしたはずなのに、目先の達成感に満足して歩みを止めてしまう。

永田 そういうことです。そして歩みを止めた企業にとって、再び足を踏み出すのは非常に難しいものがあります。

 結局のところサステナブルビジネスにおいても、いかに事業化するか、いかに収益が上がる仕組みを構築するかというビジネスデベロップメントが重要であることに変わりはないということですね。

永田 そう思います。社会に対する影響力を持たない限り、社会を変革することはできませんから。ただ、ビジネスを大きくするためには、一時的に何かを捨てなければならないこともあるし、何かを飲み込まなければいけないこともあるものです。では、その時々で自分たちは何を捨て、何を飲み込むのか。その判断は慎重にやってきたつもりです。

 なるほど。僕の周囲には「農業の課題を解決するぞ」という高い志で起業したベンチャーがたくさんあるのですが、収益が伸びずに苦戦しているところも少なくありません。そういうときに、僕は「他のこともやってみたらどうか」「どこかと協業してみたらどうか」といったアドバイスをするのですが、「いや、自分たちがやりたいのはこれなんです」と聞き入れてもらえないことが多々あります。その心意気は当然大事なのですが、そこに固執するあまりに破綻してしまっては元も子もないんですよね。

永田 重要なのは、いかに最終目標に近づくかだと思います。そのためには手段を選ばないというと言い過ぎですが、常に目線をゴールに向けておくことは大事でしょう。

 

本当にサステナブルファーストの時代は来るのだろうか。

 ここからは、受講生の皆さんとの質疑応答にしましょう。どんどん手を挙げてください。

受講生 サステナビリティという概念が広がると、資本主義は終焉を迎えるのではないかという人もいます。お二人はどう思われますか。

永田 結論から言うと、資本主義の構造そのものは変わらないと思っています。ただし、「何も変わらない」わけではありません。「何をもって経済的合理性が決定されるか」が変わっていくはずです。これまではいかに安く大量に作るか、いかにお金を稼ぐかが優先されてきましたが、これからはサステナビリティが最優先されることになります。資本主義のルールは変わらないけれど、経済を動かす源泉が変わっていく。私はそう考えています。

 僕も同感です。ただ、「本当にサステナブルファーストの時代は来るのだろうか」と思っている人もまだまだいますよね。

永田 いや、実はすでに資本家層はサステナブルファーストに変わりつつあります。今や世界のサステナブル投資の総額は20兆円を超えていますから。そうすると経営者も変わらざるを得ません。これまでのような売上至上主義では、投資家から見放されることになります。

 なるほど。

永田 また、労働者においては世代交代が進んでいて、2025年には日本の労働力人口の50%以上をミレニアル世代が占めることになります。つまり、価値観の世代交代が起こっていくわけです。こうしたことを踏まえると、従来の資本主義からポスト資本主義への転換は間違いなく進んでいくはずです。ただ、全てが一度にひっくり返るわけではなく、「ビジネスとはお金儲けのことだ」という考え方も根強く残っていくと思います。

 それはそうかもしれませんね。

永田 ただ、私はお金儲けを否定するつもりはありません。世の中を動かすためには、儲かるという実績を見せたほうがいい場合もありますし、「お金儲けのためにサステナブルビジネスをやるんだ」というのも一つの考え方だと思います。

 今の話に僕からも一つ付け加えると、必ずしも「資本=お金」ではないんですよ。例えば知識資本主義という言葉があるように、ナレッジも資本の1つです。だから、今後は商品やサービスをお金と交換するのではなく、ナレッジと交換するといったケースが出てくるかもしれない。あるいは、お金に替わる「知識通貨」のようなものができるかもしれません。これもまた、資本主義の変化の可能性だと僕は考えています。

 

個人的な課題の解決が、世界の課題解決になりうる理由。

受講生 「自分にとっての課題を見つけることが大事だ」という話が今日の講義で出ました。私もそう思うのですが、その一方で、自分の課題を解決することが果たして世界の課題解決につながるのだろうか、という疑問もあります。どう考えればよいでしょうか。

 おそらく今の質問では、「グローバル」という意味で「世界」という言葉を使っていると思うのですが、何でもかんでもグローバルな課題を解決しなければいけないということではありません。身の回りには、もっと身近な「世界」があるはずです。例えば家庭でも学校でも、ある人にとっては「世界」ですよね。そういう「世界」の課題解決につながれば良いのではないでしょうか。

永田 確かにその通りですね。

 あとは、自分では「これは個人的な課題だ」と思っていても、そうとは限らないパターンもあります。同じ「個人的な課題」を抱えている人が、それこそ世界中にいるかもしれない。この場合は、個人的な課題がそのままグローバルな課題につながりますよね。

永田 私はグローバル云々よりもビジネスとして成立するかどうか、という視点で考えてみるといいと思います。いくら何かの課題を解決する商品やサービスを開発したところで、それに対してお金を払ってくれる人がいなかったら、サステナブルビジネスとして成立しないわけですから。ですから、まずはその課題解決に対して「お金を払ってくれる人がいるかどうか」を想像してみてください。

 非常に現実的かつ、大事な視点ですね。

永田 ちなみに、ビジネスとして成立しないパターンには大きく3つに分けられます。1つは、その商品やサービスを必要とする人が極めて限定される場合。2つめは、必要としている人はいるけれども、その人たちがお金を払うことができない状況にある場合。3つめは、お金を払いたい人はいるけれど、提供にコストがかかりすぎて値段が合わない場合。これら3つを避けることができるのであれば、ビジネスとして前向きに考える価値があると思います。

 今日は永田さんと受講生の皆さんと、本当にさまざまなディスカッションができました。ありがとうございました!

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