TOPニュース経済の潮目が変わる時、 日本企業はどう行動するべきか(冊子「人材応援」VOL.17より転載)

2021.06.01

経済の潮目が変わる時、 日本企業はどう行動するべきか(冊子「人材応援」VOL.17より転載)

2020年8月に「ミドリムシ」の会社から「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」の会社へとアップデートを果たした株式会社ユーグレナ、2020年12月に「リバネスユニバーシティー」を発表した株式会社リバネス、そして、2021年3月に「Beyond Stations構想」を発表した東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)。事業規模も業種も異なる3社は、なぜ時を同じくしてこのような発表に至ったのか。今回は、2021年3月5日に超異分野学会内で実施したセッション『サステナブルビジネス-「持続可能性」で判断し行動する人を創る』から紐解く。 (詳細:https://hic.lne.st/conference/hic2021/
※冊子「人材応援」VOL.17に掲載された記事を転載しています。

鉄道企業のサステナブルビジネスへの挑戦

小谷:コロナ禍もあいまって、人々の鉄道利用が減り、キオスクや券売機も自動化が進んでいますよね。鉄道事業を主事業にしてきたJR東日本はどんな企業に変容していくのでしょうか?

:私たち鉄道会社が現在取り組んでいるのは、どこに住んでいても、どこで働いていても不便なく活動できる環境を作ることです。例えば、育児の場合ですと、駅でのベビーカー利用は非常に利便性を欠くという意見を多く耳にしまして、空きスペースをベビーカー置き場にして、ベビーカーレンタル事業(ベビカル)を開始します。さらに、保育所を基点にお年寄りと子どもの交流を活性化させて、日本の文化を子どもたちに伝承する事業も始めています。社会課題を解決するビジネスを通して、鉄道利用する人が結果的に増えればと考えています。

:青森県産りんごのブランド価値をさらに高めることを目指して、青森駅に青森県産りんごのシードル工房と市場を兼ね備えた「A-FACTORY」も作っていますよね。JR東日本だけが儲かればいいという考えではなく、りんごの規格外品を有効利用するというのが、まさにこれまでの概念とは違う事例です。りんご生産者である農家さんにもちゃんと稼いでもらいながらサステナブルビジネスにしていく。これこそ、知のステーションです。これからは中央集権モデルから、このような地域に根ざしたディセントラライズドモデルが東南アジアでも普及していくはずです。JR東日本はこのモデルを広げていく会社になるのではと私は思っています。

出雲:未来においてJR東日本の業態が変わったかどうかは、証券コードでも分かるかもしれませんね。数十年後に運輸業銘柄の9000番台のままだったとしたら、トランスフォーメーションをしなかったのだと言えるでしょう。大企業のトランスフォーメーションは、リーダーが会社の生業を変えてやるんだ、というくらい本気でビジョンを描いてチームを動かしていかないと、大きい組織がゆえに難しいところがあると思います。

:ベンチャーの中で唯一サステナブルビジネスを成功させているのがユーグレナです。一部では、通常の燃料よりも価格が高いバイオ燃料のビジネスに反対する方々もいます。確かに経済的な基準にもとづくと10倍高いものを買う人はいないかもしれませんが、一方で、このまま化石燃料を使い続けると地球温暖化が進み、地球がもちません。地球を守るためにはバイオ燃料を10倍高くても売れる仕組みを作る必要があります。地球環境を守れる技術がここにあるのに、概念が変わらなくて変えられない世界がまだあります。私は教育によってその考え方を変え、世界を変えていきたいです。その結果、ユーグレナのように、リーダーが本気で旗を振れば、サステナブルビジネスは誰でもどこでも成功するようになると考えています。

地球にもプラスになる考え方を当たり前に持つミレニアル世代

小谷:大多数の人はまだ金融資本主義的考え方で活動しています。そういった人たちにこそ、サステナブルな活動に参加して欲しいですが、どうしたら参加してくれると思いますか?

:直球で言ってしまえば、「儲かりますよ」ですよね。でも、間違ってはいけないのが、儲かるためにやるのではなく、地球にとって持続可能な形を作っていく中で、「結果的に儲かる」 というのが正解です。

:地球にとってプラスになることは、 結果的に、関わる人や地域にも必ずプラスになるはずです。だからこそサステナブルビジネスが成り立つわけですが、今までの経験上、同業者が集まるだけでは難しいと考えています。

出雲:サステナブルビジネスが当たり前になると言っても信じてもらえないのはなぜかと考えたのですが、単純にそれに取り組む人数が少ないからなんです。現在、日本企業のトップを担っているのは団塊世代ですが、私たちミレニアル世代と比べて、倍近い人数の同期がいます。意思決定するときはたいてい多数決で決まるのが日本。世代の人数比を考えるとサステナブルビジネスと言ってもすぐに「OK」とはなりません。徐々に労働市場から団塊世代がリタイアし始め、社会の中核で活動する人たちの過半数がミレニアル世代になる2025年に潮目が変わると私は考えています。2025年までは逆風が強い。でもそこからガラッと変わるはずです。

:私は、ちょうど団塊ジュニアとミレニアル世代の狭間の1978年生まれなのですが、勝手にブリッジ世代と定義しています。調和を重んじながら、上の世代と下の世代をつないでいくのが使命かなと。学生時代に後輩の出雲さんとユーグレナを立上げた時も、「バングラデシュには主食の米がたくさんありお腹がいっぱいなのに栄養失調で苦しんでいる人がたくさんいる。何で博士がこれを解決できてないんだ!」と言われ、研究者の知識を使って一緒に解決したいと思ったのが始まりです。自身の専門分野が藻類でもあったので、藻類研究の大家や昔から藻類の大量培養をやっていた地域企業をブリッジして、ユーグレナの大量培養技術にこぎつけました。リバネスが2020年12月に発表したリバネスユニバーシティーでは、このブリッジコミュニケーションの考え方を企業の方にも伝えていきます。会社の存在意義は稼ぐことではなく、ビジョンを共にした人たちが集い、世の中を良い方向に変えること。それを当たり前のように理解しているミレニアル世代と、意思決定する団塊世代の考え方を調和させていきたいです。

:長く続く企業が日本に多いのは、お金儲けをしたいという儲け主義ではなく、課題が明確で「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの考え方があったからだという話をよく聞きます。全ての企業がこのことを見つめ直し、もう一度考えなくてはいけないですよね。

人が「つながる」ことでうまれる新しい教育システム

小谷:ユーグレナはグループ全体でコーポレート・アイデンティティを統一し、サステナビリティを軸とした事業を展開する方針にシフトされましたが、JR東日本が3月に発表した「Beyond Stations構想」はどのようなものなのでしょうか?

:ヒトの生活における「豊かさ」を起点として駅のあり方を変革し、「交通の拠点」という役割を超えて、駅を“つながる”「暮らしのプラットフォーム」 へと転換するという内容です。リアルとバーチャル両方のインフラを整備した駅を基点として多様な知識が集まり、新しいビジネスが創発されるような場をつくりたいと考えています。その仕掛けとして、リバネスユニバーシティーと共にJRE Station カレッジを立ち上げ、2021年9月から東京駅にてプレ開校します。

出雲:私も駅が変わることは重要だと思います。「駅とは何か」を考えると、元々は馬が待機していて、馬で次の宿場町まで行くための場所というのが漢字の表す駅だと思います。今回の発表は、漢字ではなく英語の意味が近いと思いました。英語のステーションはラテン語のストー、立つという意味から来ています。知識や人、抽象的なものも立つところがステーション、拠点ということです。つまり、東京ステーションが次の100年の知の拠点になるのですね。

:JRE Station カレッジは、年齢も業種も立場も超えて、異分野人材のコミュニケーションを通した新しいサステナブルビジネスを創出することを目標としています。プレ開校を東京駅からスタートするのは、100年前にものすごく高い志を持つ先輩方が、 世界一の駅を作るために多大な努力を重ねて開業したからです。そういった事実を知り、私たちはこういった想いや知識を引き継いでいるんだと、感動を覚え、身震いしました。ですから、次の100年先にむけて、駅や街に異分野人材が集まり、様々な研究や実験に取り組んでもらって、社会課題の解決ができる拠点にしていきたいと考えています。

:ミレニアル世代よりも上の世代の感覚では、「新しいことを仕掛ける」と聞くと「売上を立てること」に意識が行きがちですが、今まさに産業の中心で活動している世代こそが、次の100年を見通して持続可能な社会を作るために、学ぶ場が必要です。このまま放置しておくと、当たり前のようにサステナブルに物ごとを考えられるミレニアル世代にとって、我々世代がどれだけ邪魔な存在になるか想像に容易いですよね。しかし、未来をミレニアル世代だけが考えて作っていけばいいのかというと、それは違います。現在の日本を築き上げてきた素晴らしい先輩方の知識も混ぜながら、共につくっていく必要があります。そのためには先輩方の考え方を現代にトランスフォームすることがとても重要になってきます。この分断の時代に知識プラットフォームを通じて繋がる教育は、日本初の教育モデルとして海外へも輸出できるでしょう。それができるのがリバネスユニバーシティーだと確信しています。

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